Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しょうしょうしげもとのはは

少将滋幹の母

谷崎 潤一郎

Lisez 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 83 234 caractères · 160 écrans

Aozora Bunko

にくい感じがして、なか/\慰めに行くどころではなかったのであるが、お父さまはお優しい人なのですよ、若様が行ってお上げになればどんなにお喜びになりますことか、と、乳人は云って、或る日滋幹の手を執って、父の部屋の前まで引っ張って行き、さあ、と、障子を開けて無理に中へ押し込んだことがあった。もとから痩せていた父は、一層痩せて眼が落ち窪み、銀色の鬚をぼう/\と生やして、今まで臥ていたのが起きたところらしく、狼のような恰好をして枕もとにすわっていたが、その眼でジロリと見られた途端に、滋幹は体がすくんで、口もとに出かゝっていたお父さま、と云う声が、咽喉の奥に痞えた。

親子はしばらく、互に眼で探りを入れながら見合っていたが、でもそのうちに、滋幹の心を壓していた恐怖感が次第に和らいで、或る云い知れぬ甘いなつかしい感覚に代った。それが何に原因するのか滋幹にも最初は分らなかったが、間もなく彼は、あの、母が常に薫きしめていた薫物の香が、此の部屋の中に満ち/\ていることに気づいた。そして、よく見ると、父がすわっているあたりに、むかし母が身に着けていた袿や、単衣や、小袖や、さま/″\な衣裳が取りちらかしてあるのであった。