Classiques japonais avec furigana
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たんていやわ
探偵夜話
岡本 綺堂
Lisez 探偵夜話 (たんていやわ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 140 363 caractères · 277 écrans
それは溝口医師と抱え車夫の元吉の声であった。
「ともかくも家まで乗せて行け。」
溝口の命令する声がきこえて、やがて車は門前におろされた。お銀は窓から伸びあがって覗いてみると、車夫の元吉は梶棒をおろして、くぐり門から一旦はいったかと思うと、さらに内から正面の門を左右にひらいて、車を玄関さきまで挽き込んで行った。その提灯のひかりに照らされた車上の人は若い女であった。そのあとから溝口もつづいてはいった。
お銀はさらに台所へまわって、水口の戸をすこし明けてうかがうと、溝口と元吉は女を介抱して奥へ連れ込んで行くらしい。元吉は夫婦者で、お新という若い女房がある。そのお新も自分の家から駈け出して行って、なにか手伝っているのを見ても、それが急病人か怪我人であるらしいことは、容易に想像された。まさかにコレラでもあるまいとお銀は思った。
そのうちに元吉とお新の夫婦が奥から出て来たので、お銀は水口から出てそっと様子を訊くと、元吉はあたまを掻きながら答えた。
「いや、どうも大しくじりをやってしまいましてね。旦那をのせて帰ってくると、すぐそこの角で暗いなかから若い女が不意に出て来たので、あっと思って梶棒を振り向けようとする間もなしに、相手を突っこかしてしまったんです。