Classiques japonais avec furigana
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たんていやわ
探偵夜話
岡本 綺堂
Lisez 探偵夜話 (たんていやわ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 140 363 caractères · 277 écrans
お島さんはもう気が気でないらしい、僕を途中に置き去りにして、夏の虫のようにかがり火の影をしたって駈け出した。
そこにはもう警官が出張していた。そうして、僕の想像通りに真っ白な雛子の顔がかがり火の下に仰向けになっていた。夜網の漁師たちが沖へ漕ぎ出すと、主のない一艘の小舟がゆらゆらと漂っているので、不思議に思って漕ぎよせて見ると、船の底には若い女が倒れていた。女は両手にしっかりと櫂をつかんでいた。よくみると、女は脇腹を深く貫かれて、腰から下は血だらけになっているので、漁師たちも驚いた。それから浜じゅうの騒ぎになって、大勢があつまって来ると、磯ばたへ引きあげられた女の顔には見識り人があった。彼女は近所の町の雛子という若い芸妓であることが判った。しかし雛子がどうして海へ乗り出して、何者に殺されたのか、誰にも想像が付かなかった。かがり火の下の死骸を遠巻きにしている人達は思い思いの推量をくだして、がやがやと立ち騒いでいた。
雛子がどうして海へ出たのか。何者に殺されたのか――その秘密を知っている者はおそらく僕一人かも知れない。そのほかには、僕の話を聞いているお島さんだけであろう。