Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 158 540 caractères · 319 écrans

Aozora Bunko

このままで済めば政吉は頗る不利益であった。いかに彼が冤罪を訴えても、小判二枚を持っていたという証拠がある以上、なかなかその疑いは晴れそうもなかった。しかも彼は幸運であった。無言の証人が源森橋の川しもにあらわれて、この事件の真相を説明してくれた。

それは河獺であった。大きい一匹の河獺が死んで浮き上がったのである。河獺の首には財布の紐が堅くまき付いていた。そうして、その財布のなかには四十両あまりの小判がはいっていた。

荒物屋の夫婦が想像した通り、暗い雨の夜に十右衛門を襲ったのは、やはりこの川にすむ河獺であった。いたずら者の彼は傘のうえに飛びあがって、人間の顔や頸筋をむやみに引っ掻いた。そのはずみに財布の紐が彼の爪に引っかかって、財布は十右衛門の首からぬけ出して更に彼の首に巻きついた。二枚の小判はその時に財布の口からころげ出したのであろう。かれは財布を頸にかけたままで元の川へ飛び込んだから、小判の重みで其の紐が強く吊れるので、かれはそれを取り除けようとして頻りに前脚を働かせるうちに、紐は意地わるくこぐらかって絡み付いて、かれは自分で自分の頸を絞めてしまった。