Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 158 540 caractères · 319 écrans
四
と、半七は暗い空を見た。「まあ、大したこともあるめえ。さあ、すぐに来い」
四
権太郎はおとなしく付いて来た。半七は路地へはいって、稲荷の社のまえの空地に立った。
「おい、権太。お前はまったくあの半鐘を撞いたことはねえか」
「おいら知らねえ」と、権太郎は平気で答えた。
「印判屋の干物に悪戯をした覚えもねえか」
権太郎はおなじく頭をふった。
「この裏にいた妾を嚇かしたことがあるか」
権太郎はやはり知らないと云った。
「お前には兄弟か、仲のよい友達があるか」
「別に仲の好いというほどの友達はねえが、兄貴はある」
「兄貴は幾つだ。どこにいる」
霰がざっと降って来たので、半七も堪まらなくなった。かれは権太郎の手を引っ張って、以前お北が住んでいたという空家の軒下に来た。表の戸には錠が卸してなかったので、引くとすぐにさらりと明いた。半七は沓脱へはいって、揚げ板になっている踏み段を手拭で拭きながら腰をかけた。
「お前もここへ掛けろよ。そこで、おめえの兄貴というのは家にいるのか」
「年は十七で、下駄屋に奉公しているんだ」
その下駄屋はここから五、六町先にあると、権太郎は説明した。おやじが死ぬと間もなく、阿母はどこへか行ってしまって、兄貴と自分とは孤児同様に取り残されたのであると云った時には、いたずら小僧の声も少し沈んできこえた。