Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 158 540 caractères · 319 écrans

Aozora Bunko

二人を無理に内に招じ入れて、煙草盆や茶などを出した。外の雨の音はまだ止まなかった。昼でも薄暗い台所では鼠の駈けまわる音がときどきに聞えた。

「お宅も鼠が出ますねえ」と、半七は何気なく云った。

「御覧の通りの古い家だもんですから、鼠があばれて困ります」と、お初は台所を見返って云った。

「猫でもお飼いになっては……」

「ええ」と、お初はあいまいな返事をしていた。彼女の顔には暗い影がさした。

「猫といえば、隣りの婆さんの家はどうしましたえ」と、熊蔵は横合いから口を出した。「息子は相変らず精出して稼いでいるんですか」

「ええ、あの人は感心によく稼ぎますよ」

「こりゃあ此処だけの話だが……」と、熊蔵は声を低めた。「なんだか表町の方では変な噂をしているようですが……」

「へえ、そうでございますか」

お初の顔色がまた変った。

「息子が天秤棒でおふくろをなぐり殺したんだという噂で……」

「まあ」

お初は眼の色まで変えて、半七と熊蔵との顔を見くらべるように窺っていた。

「おい、おい、そんな詰まらないことをうっかり云わない方がいいぜ」と、半七は制した。「ほかの事と違って、親殺しだ。一つ間違った日にゃあ本人は勿論のこと、かかり合いの人間はみんな飛んだ目に逢わなけりゃあならない。