Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 158 540 caractères · 319 écrans
藤屋という酒屋を探しあてて、表から店口を覗いてみると、小皿の山椒をつまみながら桝酒を旨そうに引っかけている一人の若い中間風の男があった。
半七は手拭を出して頬かむりをした。店の前に積んである薪のかげに隠れて、男の様子をしばらく窺っていると、彼は番頭を相手に何か笑いながらしゃべっていたが、やがて勘定を払わずにそこを出た。
「今夜は頼むよ。その代り二、三日中にこのあいだの分も一緒に利をつけて返さあ。ははははは」
彼はもう余ほど酔っているらしく、寒い夜風に吹かれながら好い気持そうに鼻唄を歌って行った。半七も草履の音を忍ばせて、そのあとを尾けてゆくと、彼は自分の屋敷へは帰らないで、九段の坂上から旗本屋敷の片側町を南へぬけて、千鳥ヶ淵の淋しい堀端の空地へ出た。見ると、そこには又一人の男がたたずんでいる白い影が、向う側の高い堤の松の上にちょうど今、青白い顔を出した二十六日の冬の月にあざやかに照らされていた。眼のさとい半七はそれが彼の山崎平助である事をすぐに覚った。ここで二人が落ち合ってどんな相談をするのであろう。こういう時には、月の明るいのが便利でもあり、また不便でもあるので、半七は彼等の立っている空地と向い合った大きい屋敷の前へ忍んで行った。