Classiques japonais avec furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lisez 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 154 788 caractères · 299 écrans
……その間木炭だけしか書けないかと思うと心細くなる。しかし蛮土の恵みには木炭だけには事欠かぬ。土人のロサチの見つけて来たスアガという柘植のような木を焼いたのは、立派な木炭になる。パラシが阿弗利加樫で沢山まるでヘルキュレス神でも使いそうな厚いスケッチ板は拵えてくれたしこれだけにはなんの不自由もない。夜、些細なことで、コンラッドとジャクスンとが口喧嘩をして二人とも食事なかばに立ってしまう。しかも見ている人のほうでも、少しも気にかけぬ様子。湿熱とこの長雨とでは、人の気も鬱屈して、みんなただ獣のように心が荒んでしまう。しかも獣よりもなお悪いことは、荒んだ心の外に、男たちは年中喧嘩をして、そして……私を見る眼ばかり鋭くギラつく。ゴリラは醜悪だ! しかし醜悪でもゴリラの檻の前で、絵を描いたりヴァイオリンを弾いている時だけが、私の一番に気の安まっている時だ。
十一月二十九日。久しぶりで土人女中のイスカーキが湯を立ててくれる。湯といっても正式の浴槽なぞがあるわけではない。パラシの拵えた木の箱だ。まるでベツレヘムで基督の産湯を使われた厩槽そっくりの体裁だ。
しかし、それでもべとべとと身体に纏りついた汗を流して、なんとも言えぬ爽快さを覚える。