Classiques japonais avec furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lisez 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 154 788 caractères · 299 écrans
そしてもちろん、妻は初めから自分の手を下して食事や細かい世話なぞをしていたわけではなく、一切がっさい給仕頭のガルボ任せであったから、妻からかまい付けられなくなった悲哀は、むしろ食事をくれるガルボの後ばかりを追って、これを妻よりも慕っているような風であった。
さて、その頃のある日であった。もっと詳しく言えば、夜寝室へ鍵を掛けるのをもうそろそろ外してくれるようにと妻の最も機嫌のいい時を見はからって、今日頼んでみようか明日言い出そうかとそのことばかりに私が心を砕いていた頃のある日のことであったが、一日私は税務署関係で自分の財産調べのために銀行を休んで、書斎に引き籠っていたことがあった。妻の許へは朝から女友達の来訪があったらしく、居間からは洋琴の音が洩れたりレコードが奏でられたり、そして昼は庭の常春藤の陰に卓子を拵えさせて、そこで食事を取っていたようであったが、かれこれちょうど二、三時間くらいもたった頃であろうか。私は書斎の外に書庫をもう一つ、サン・ルームの隣りに持っていた。
そしてちょっと調べたい書物があって、階段を上って私はそこまで行こうとした。外廊下を通り過ぎてヴェランダを眺めつつ中廊下へはいって、妻が今が今そこで友達と茶の卓を囲んでいるサン・ルームの隣りまで来て、さて必要な書物を書架から抜き出している時