Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

Lisez 白髪鬼 (はくはつき) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 112 046 caractères · 224 écrans

Aozora Bunko

裏門を這入ると、両側にコンモリとした灌木の茂みが並んで、昼も小暗い小径になっている。わしは暑い日など、愛読の哲学書を携え、この小径をさまよって、先哲と物語をした仙境である。

わしは夢の如く現の如く、よろめきよろめき進んで行ったが、小径が尽きて広い庭へ出ようとする所まで達すると、茂みの向側からふと人の声が聞えて来た。

アア皆さん、それを誰の声だったと思います。わしは耳を澄さぬうち、早くも脳天をうちのめされた様に、ハッとして立ちすくんでしまった。

瑠璃子だ。瑠璃子の声だ。五日間の生埋の間、一瞬たりとも忘れなかった、わがいとしの妻の声だ。

わしは破れ相に高鳴る心臓を押えて、ソッと茂みの間から覗いて見た。

いる。いる。確に瑠璃子。我妻瑠璃子。白っぽい着物を着て、嬉しげに微笑した美しい顔を、惜げもなく月光にさらして、しずしずとこちらへ歩いて来る。

わしは思わず「瑠璃さん」と叫んで、茂みを飛び出そうとした。危い危い。すんでのことで声を立て、姿を現わすところだった。

その咄嗟の場合、うしろからわしを引止めたものがある。人間ではない。わし自身の心が――一種異様な疑いの心が、わしを引止めたのだ。