Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
まさか高氏の一生涯を、このままにもしておけまい。どうせそれほど命脈のある幕府ではなし」
彼は太々しかった。
押し籠められてからの自暴ではない。本来の横着さだった。
一身の運命も、そう片づけていたし、この室の有様をみても、彼の物ぐさと整頓には不得手な性質をよくあらわしていた。徒然に読みかさねた和漢の書も、机のチリも硯も、雑然たるもので――そのくせ新田の者には、掃除の手もふれさせなかった。読書に倦めば寝ころび、食べては寝、今の世に折合えない二十の不逞な生命を、みずから持てあましているかに見える。
晩春の夜の生ぬるさは、いとど囹圄の高氏をくるしませた。
若い肉塊は、なにか、疼きにたまらなくなるらしい。思うざまな大欠伸を一つして、大の字形に反ッくり返ると、
「いまにみろ」
誰へともなく、呟いて、
「……いまに」
また言って、眉をとじた。
思えば、癪な。
元服の折、天皇領の住人というので賜わった“治部大輔”も、こんどのことでは、朝廷に返上して、慎みに服してきたのだ。それなのに、いちどの喚問さえなく、おれを生殺しにしておくこの処置は、いったいどういう幕府のはらなのか。