Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
わからぬか、屋形の直義ぞ」
気もせいているので、彼は言いすてたまま、郭内へ逃げこみ、すぐ屋形門へ入るのは避けて、鑁阿寺の堀橋を走り渡った。
「……はてな。御舎弟さまには違いなかったが?」
組頭の佐野十郎が、小首をかしげているまもなかった。
もうそこへ追跡して来た二、三十名の新田方の番士と、城戸守りに詰めていた足利方の武士との間に、烈しい口争いが起っていた。
「いや、たしかに、曲者はこの城戸内へ逃げこんだ。渡せい。渡すがいやなら、ここを通せ」
「どっちも相ならん。また、そのような人間は見てもおらぬ」
「そう庇うのは、いよいよ怪しい。曲者は足利屋形の一族だと、みずからいっているようなものに聞える」
「なんと言いがかりをつけようが、一歩も通せぬ。帰れ、帰れ」
「いや退かん。おれどもは、日頃の新田党ではない。鎌倉どのの御直命で、囚人の警固に当っておる者だぞ」
「な、なに。囚人とは、たれのことを」
「いうまでもないわさ。おのれらが若殿と仕えているお人よ」
「しゃッ、ほざいたな」
「言ったが、どうした。そこ退けい」
「やわ退こうか。通れるものなら、通ってみろ」
「それっ、踏みつぶせ」