Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
それは、彼自身の血を単位に、過去の繁茂を仰ぎ見させる“系図の大樹”そのものだった。
足利家の系図
このほか女子や母系の人々、分家の支族など、かぞえきれない葉や枝がある。置文(遺書)の筆者家時などは、つい近年の故人にすぎない。が、その祖父の自殺の原因も、今は解けよう。高氏の手はわなないた。
祖父の家時を、高氏は、顔すらも知ってない。
ただ、幼時のうろ覚えには、その足利式部大夫家時は、弘安十年、まだ三十五の若さを、この御霊屋で、腹を切って死んだとか。
そしてそのさいの遺言状“置文”は、以後、厳秘となって、世継のもの以外は、見せしめない家憲となった。――がただ、高氏の父貞氏のみは、かつて、見た日があったにちがいない。
「……あわれ、なにをば、切腹の日に、書きおかれしか」
高氏は、黙礼した。
そして、畏る畏る封を除くと、紙質のちがった、べつの一書があらわれた。……と、故人の鬼魂がそこらを旋ッて啾々と生き身に何かを訴えるようだった。――高氏は、指のふるえを禁じえない。抜きかけたが、ベリッと、いいそうな、硬い感触にもためらわれた。斑々と、紙端に黒く乾からびているのは、血の痕らしい。