Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
似絵師のことばでよく、“藤原顔”というあの瓜実顔ではあるが、鳳眼するどく、濃いおん眉、意志のつよげなお唇もと、また、ひげ痕も青々と、皇系にはまれな男性的な御風貌であった。
わけて、常人の印象となるであろう点は、笛の孔に無心な指の律動を筬のように弾ませていらっしゃるそのお手のなんとも大きなことだった。貴人にして力士のようなお手である。把握欲と闘志の象徴とでもいえるものか。なみならぬ天賦の御気質のほどがそれには窺われる。
で、思い合わされるのは。
いまは九重の上、お噂とて、なかなか洩れ難いが、かつて吉田定房の邸におられた皇太子時代には、そうした豪気による放埒の御片鱗が、しばしば世上に聞えぬでもなかった。
たとえば、その当時。
ある年の秋の一夜だったが、西園寺の前ノ太政大臣実兼の末の姫が、とつぜん北山の邸から姿を消した事件など、ひところの騒ぎであった。
姫はまだ十七、深窓の愛しみにくるまれていたが、佳麗な容姿はかくれもなく、つねづね若公卿ばらの野心のまとであった。
それだけに、西園寺家では「――いかなる悪党の仕わざか。もしや野伏から人買いの手にでも渡されてか?」