Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
「……では、鎌倉へつかわすその御告文とやらを、大炊どのが、ただ今、したためておるのでございますか」
「さよう……。集議、ぜひもなければと、ついに今日、それには極ったがの。さて、その文案は、むずかしかろ」
「告文とは、どんな意味を持つものやら。みことのり、綸旨、それともちがいましょうか」
「申さば、天子の私信。このたびの変も、陰謀とやらも、全く、天子自身は、あずかり知るところでなかった――という言い訳を遣わすようなもの。北条方とすれば、まさしゅう、天皇の詫び状なりと、鬼の首でも取ったように、見るであろうよ」
「ま。くちおしい限りではございませぬか。万乗の大君をして、さまで幕府の鼻息に阿るような策をおすすめ申さいでも、毎日の公卿集議には、もそッとほかによいお智恵も」
「…………」
後醍醐は、お耳をすました。――そのとき南縁の鳴板(鴬張り)に静かな跫音のキシミが聞えたからであった。
「冬信らしい」
みかどは、呟かれた。
あらかじめ、その者の伺候を、お待ちうけだったような御容子でもある。
廉子は、みかどのお側を立ち惜しみながらも、
「大炊どのがお見えとあれば、また夜の集議に、他の人々も罷られましょう。