Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
――高氏もとっさに刎ね返されている。しかも、またすぐ、
「おのれ」
魔気のこもった薙刀で、
「変化、変化、変化」
と、斬りつけて来る早技も、高時の芸には似気ないものだった。高氏は身を交わしつつ、やっと、彼の手もとをとらえ得た。――そして、その寸間に、先を争ってどろどろ逃げ出す田楽天狗の男女に尾いて、彼もまた、すぐ高時の体を突ッ放し、すばやく外へ難を避けた。
だが、高時もとどまってはいない。
むしろ、その跳躍と薙刀のえがきは、限られた一室から、華雲殿全体の空間を持って、一躍、水をえた魚に似る。
ただ、逃げ廻る烏天狗の影は、みな一様な扮装だから、どれが高氏かは、分りそうもない。
もっとも、たったいま自分を痛めつけた者が、高氏の変装とは、乱心の高時の眸にはもとよりのこと、この渦中にある家臣誰とて、気づき得るはずはなかった。
「……登子はどうしたか?」
狂気でない高氏の方には、その気がかりもある。彼がふと、あらぬ方向へ一跳足しかけたのは、自然だった。けれど、高時の狂刃に、木の葉の如く追い廻されている役者どもを見ては、彼女の安否も、かえりみていられず――再び逃げ舞う天狗の中に交じって、わざと高時の狂刃を待ち構えた。