Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans

Aozora Bunko

何か少し吐いたようだ。蒼白な手はまだ、虚空にものを掻き探している。

「や、や。御失神か」

「それっ、典医を呼べっ」

主君の体をとりかこむ者、医師の寮へ駈け出す者、一瞬はただ黒々とのみ渦巻いた。ところが、ここに一人の烏天狗だけは、人々の狼狽ぶりをよそに、スーと抜けて、もとの酒宴の御簾座の方へ、消え入るごとく走りかけた。

「待てっ、高氏」

ちらと、見つけて、追っかけたのは道誉だった。

後ろから、むずと、相手の半衣の羽ネをつかんで。

「執権の君の御重態を眼に見つつ、どこへ失せる。おぬしゃ高氏にちがいあるまい」

「いや、ちがう」

「では、誰だ」

「……今宵の天狗の一人」

「なんの、その声はあざむけぬ。仮面を脱れ、足利天狗」

「むむ、そうかおぬしも、伊吹の婆娑羅天狗だったな、天狗なら天狗を知るはず。角力しようッ、道誉」

あっと、道誉は身をくねらせたが、遅かった。高氏の手のひらが、いきなりピシッと、彼の横顔を打ったのである。のみならず、彼がよろめきを立ち直さぬ間に、その五体は、華雲殿の真ン中へ、でんと、屋鳴りするほど投げつけられていたのだった。

「……登子、登子」

天狗は後も見なかった。