Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans
「久慈の正家からか」
「は。御状をたずさえて」
「見ようか」
「お夜食は」
「あとにする」
東国の常陸久慈郡へは、一族のひとり楠木正家が彼の代官として年暮から下向していた。そこからの一便らしい。
長い書面だった。
見終ると。
「飛脚の武士を呼んでくれい」
「お会いなされますか」
「ム、東国の事情を訊こう」
「あちらの形勢など深い事情は余りわきまえぬかのような走り下部にすぎませぬが」
「それでもよい」
これの話がまた長かった。訥々、素朴きわまる飛脚武士なのである。正成はそれをつかまえて、物の値段をきいたり、去年の作物の刈入れをたずね、また東国のことしの正月はどんな? ――などとそれからそれへ雑談を求めて倦むこともない。
しかし彼にすれば、正家の書状の内容とあわせ観て、何かうるところがあるのだろう。やがておそく寝所へ入った。
枕は彼の憩いでなく、枕は近来彼の憂いをさらに研ぐ一座の思念石となっている。枕につくと、彼には日本じゅうの物音がその石から聞えてくるのだ。坐ながらでなく寝ながらにして世の人心まで映ってくる。
「せんない憂いを」
と、彼は思う。
一個の力などではどうにもならない限界と、滔々たる世の趨勢が彼には観えた。