Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
はなさかぬリラ
花咲かぬリラ
山本 周五郎
Lisez 花咲かぬリラ (はなさかぬリラ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 378 caractères · 36 écrans
いま彼の心を去来する思考の中心になっているのは「花咲かぬリラ」という言葉であった。昭和十七年の一月、出征する直前に彼は恩師吉村教授の家の庭へ一本のリラの若木を植えた、それはその春にはきっと咲くと植木屋が保証してくれたものだった。……そのとき杉浦富美子と将来を約したのだ、「もし生きて帰ったら」と、二人は一緒にリラを植えながら誓った。富美子は吉村教授の旧友の娘である、実家は宮城県亘理郡の長瀞という山村の豪家で、彼女は女学校を卒えるとすぐ上京し、片町坂の教授の家から女子大へ通学していた。そのころちょうど北海道から出て来て東京の農大で酪農法の勉強をしていた来太は、教授の私的指導を受けるために週二回ずつ片町坂の家へ通っていたが、持ち前の明るい無邪気な性質から、ほとんど家族の一人のような待遇を受けていた。富美子ともそういう関係で初めからの知合いであったが、彼女は控えめというより孤独癖のある気性で、来太の来る日のにぎやかな団欒にも加わるようなことは少なく、たいていひとり自分の部屋でこつこつ勉強しているという風だった。吉村家の人々はその気持を尊重して、そっと好むままに任せていたが、来太はよい意味の無遠慮さを発揮して、どしどしでかけていってはその部屋から彼女を誘い出した。