Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

かるいざわにて

軽井沢にて

正宗 白鳥

Lisez 軽井沢にて (かるいざわにて) de 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 560 caractères · 13 écrans

Aozora Bunko

時々は何処からかしら、ポンポンと太鼓の音が聞えて来る。

「何の音だろう?」

「まさか、盆踊りがこの近所にありそうじゃなし。」

「狸の腹鼓じゃあるまいか。」

真顔でそう云った人もあった。何かにつけ「物の怪」の振舞を信じていたゲンジの時代の人々はそう思ったであろうが、我々は、たやすくそうは信じられなかった。しかし、狸の腹鼓は信じられなくっても、虫の音は、ゲンジ以来千年後の英訳を経由して、この物語の男女の心に触れていたように、私の心にも触れるのである。鈴虫松虫蟋蟀などの音色を分け得ない私の耳にも、千年の昔の虫の声々が、哀れを伝えて来るのである。嵐に耐えた竜胆の一本に宿った露が、静かな朝の光に耀いているのが、横文字の間に現われているのである。

若くて美しくて、しかし、神経質の浮舟は、老いさらぼうた尼僧と同じ部屋に寝起きをした。それ等の皺くちゃの、よぼよぼの尼達は、互いに負けず劣らずに、豚の鳴く音のように唸きながら、鼾を立てながら眠るので、浮舟は、猛獣の洞穴にいるような気がしていた。猛獣どもが今にも飛上りゃしないか。自分が噛付かれはしないかと恐ろしくなった。そんなことを恐れるのも馬鹿なことだと、彼女は思っていた。