Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 696 caractères · 310 écrans
お角は二十四五の年増盛り、柳橋に左褄を取っている頃から、江戸中の評判になった女で、その濃婉さは水の滴るばかりでした。源吉は死んだ恋女房のことも忘れ、通と粋との見栄も捨てて、ただもう愚に返ったように、日が暮れるのを合図に、猿屋町に入り浸りました。
川一と筋隔てての狂態を見兼ねたのと、近所中の噂に閉口して、妹のお松は度々苦いことを言いますが、源吉は耳を傾けようともしません。近頃はお角の弟子達を全部断って、肌寒くなりまさる晩秋の一夕を、長火鉢を挟んで口説の糸をたぐるのに余念もなかったのです。
お角は先月まで使っていた下女にも暇を出し、源吉との恋の遊戯を憚りもなく続けました。四つになる倅の幸三郎は、陽のあるうちは外面に追いやられ、日が暮れると、床の中に追い込まれてしまいます。
「おや? 坊やはどこへ行ったかしら」
お角はフト、先刻から幸三郎が見えないことに気が付きました。陽のあるうちからの酒で、玉山まさに崩れおわんぬ狂態、源吉の膝に片手を凭れて、盃をこう斜めに捧げたまま、美しい瞳が、少し三白眼に据えられたのです。爛熟しきった歓楽の底から、ホロ苦い母性が蘇ったのでしょう。