Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 696 caractères · 310 écrans
二
徳松はまだそこに居たのです。灯先にヌッと出した顔は――身体は――、顎から襟へ腕へ――膝へかけて、飛び散る碧血を浴びて、白地の浴衣を着ているだけに、その凄まじさというものはありません。
「まだウロウロしているのかい、――お菊を殺したのはお前だろう」
猛然と振り仰ぐお楽。
「違うよ、俺じゃねえ、大名なんかへやる気になったから、魔がさしたんだよ」
「何を、――お菊はな、お前のような肥桶臭い小博奕打の相手になる娘じゃない。弾ね飛ばされたのが口惜しくて、こんな虐たらしい事をしやがったろう」
「違うよ、おっ母ア」
「覚えていやがれ、そのがん首を処刑台の上に晒してやるから」
そう言ううちにもお楽は、お菊の死骸をかき上げかき上げ、赤ん坊でもあやすように、血潮に濡れた肩から、頸筋へ、額にかかる黒髪のあたりへと、際限もない愛撫を続けるのでした。
二
話は十日ほど前に遡ります。
雑司ヶ谷の鬼子母神門外、大榎の並木の蔭に並んだ茶店は、そのころ江戸の町内にもない繁昌をみせたものでした。
一つは大奥始め、諸家の女中、町人の女房たちの信仰を集めた鬼子母神の御利益と、もう一つは、鷹野、野駆け、遠乗りに頃合なので、代々の将軍始め、大名、旗本、諸家の留守居、若侍たちに、一番人気のあった遊び場所でもあったのです。