Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Lisez 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 696 caractères · 310 écrans

Aozora Bunko

平次が声をかける間もありませんでした。お越の口からはタラタラと血潮が、――振り仰いで、灯の中に源吉を求める顔の凄さ、群衆は悉く色を失いました。お越は観念して自分の舌を噛み切ったのです。

源吉は物蔭に隠れて、ワナワナと顫えました。たった一夜の、かりそめの戯言が、人間幾人の命を棒に振って、こんな恐ろしい破局にまで導いてしまったのです。

*

「八、いやな捕物だったな」

この事件がすっかり片付いてから、早春の日向をなつかしみながら、平次はつくづく述懐しました。

「親分は最初っからお越の仕業と解ったんですか」

とガラッ八。

「いや、少しも解らなかったよ。どんなに巧んだ悪事よりも、少しも巧まない悪事の方が解り難い。――お越は最初から投げてかかったんだ。石見銀山を隠していたのも自分、お雪に二度目の毒の入った水を呑ませたのも自分と、白状しているだけに疑いようはなかった」

「ヘエ――」

「戸棚の上の重箱の中へ、石見銀山を入れた様子のないのを見て少し変だと思ったよ。四五日前に石見銀山を入れたなら、埃に形が付かないはずはない。あれほど賢い女が物忘れするはずはないから、――これはヒョッとしたら最初から石見銀山を懐へ入れて、折を覘っていたんではあるまいかと思った、それが最初の疑いさ。