Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九) 全十冊
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(九) 全十冊 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 029 caractères · 82 écrans
「…………」
平次の説明の微妙さに、主人の彦七は黙りこくってしまいましたが、聴いている八五郎は、呆気に取られて鼻の穴をふくらませて聴き入っております。縁側にも物の気配、――誰やらが立ち聴きをしているのでしょう。
「お半はとうとう、独り口説に実が入って、匕首まで持出し、一緒に死んでくれとでも言って文三郎に絡み付いた事だろう。十八になったばかりの文三郎は、全身の血が火のように燃えて、カッとなったのも無理のないことだ。煩悩と憎しみと、口惜しさと酔い心地とが一緒になって、女の手から匕首を取上げると、サッと突いた――それは運の悪いことにお半の心の臓だったのだ」
「…………」
主人の彦七はガックリとうな垂れました。
「文三郎は死んで行くお半の姿を見て、夢から覚めたように驚いたことだろう。一足飛びに母屋へ飛び込んで、父親のお前さんに知らせた。しばらくは泣いて口説いて、二人は相談したことだろう。そして父子はもう一度この離屋へ取って返し、お半の胸から匕首を抜いて、その右手に持たせる恰好にし蝋燭を吹き消して――こいつはやり過ぎだったが、家持の町人はどんな場合でも火の用心は忘れない――」