Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 157 440 caractères · 313 écrans
お芝居の話に夢中になって亥刻(十時)の鐘を聞いてびっくりして帰ると――」
お栄はその時のことを思い出したものか、ゴクリとかたずを呑むのです。
声は少し顫えておりますが、顔色はすっかり平静になって、聡明らしい大きい眼も、紅い光沢の良い唇も、頬から頤へ、首筋にかけての柔かい線も、八五郎が夢中になるように、全く比類の少ない美しさです。
物の言い振りに特色があって、少しあどけない調子は、二十歳白歯の娘らしくはありませんが、それが一種の媚になって、人によっては、たまらない愛嬌ともいうでしょう。
その時、
「あッ、大変、こんなところに」
八五郎の声、家の裏のあたりで遠慮もなく張り上げます。
「何が大変なんだ。御近所でびっくりするじゃないか」
平次は八五郎をたしなめながら、水下駄を突っかけて、お勝手口から顔を出します。
続いてお栄、これも血だらけな部屋に、たった一人残るのが不気味だったのでしょう。
「親分、こいつが大変でなかった日にゃ」
八五郎は裏の空地に突っ立って、手ごろの椎の木を指さしながら、なおもわめき散らしております。その指先をたどった平次の眼。
「あッ」
さすがに驚きました。