Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

Lisez 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 157 440 caractères · 313 écrans

Aozora Bunko

近づくとそれは松の樹から取りおろした、凄まじい変死体を囲んで二人のお山同心、三、四人の町方の下っ引、それに近所の寺男や、谷中に近い店から飛び出して来た弥次馬の一隊でした。

「銭形の親分」

弥次馬は二つに分れて道を開きました。平次はお山の同心に挨拶して、

「御苦労様でございます」

静かに死骸を隠した筵を剥ぎます。

それは、近江屋の番頭の、宇八の死骸に紛れもありません。この間からの十日余りを何処で過したかわかりませんが、着物などはひどく痛んで、折目も崩れ、埃もつき、見る影もなくなった上、宇八本人も月代が伸び、不精髯まで生やして、見ように依っては、まことに哀れな姿です。

傷は半兵衛や定五郎と全く同様、右の首筋を深々とやられたものでこれが前から斬ったものなら、下手人は夥しい血を浴びたことになるでしょう。

「死骸はこの樹に吊ってあったでしょうね」

平次はだれへともなく言いました。

「磔刑の恰好で、この下枝に縛ってあったよ。ひどいことをするものじゃないか」

お山同心の一人は説明してくれました。

「足は大地から離れていたでしょうか」

「左様、五、六寸くらいは離れていたと思うが」