Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
怒れる紅蓮は、あなやと見るまに、隣りの穴蔵部屋の方へ、ゴウッと――火唸りをして這いだした。
「――お嬢様ッ……」
おたみは、声を限りに叫んだ。
百千の火龍は、かの女の肩の上から、メラメラッと音を立てて、近づいてくる。
お千絵は、お綱にかばわれて、地底の土に顔をうっ伏せ、わずかに煙を防いでいたが、乳母の声が聞こえるたびに、声をしぼって呼び返した。けれど、おたみは、背中からジリジリと身が焦がされてくるのに、そこを離れようとしなかった。
「た、たみやア……」
「――お嬢様ア! ――」
もう両方で、呼びあう力もなくなってしまった。たみの黒髪にチリチリッと火が燃えついた。
兄の唐草銀五郎に似て、気丈な乳母のたみも、さすがに、
「あッ……熱ッつつ……お嬢様ッ」
火の黒髪を振って、悶絶した。
と同時に、半ばまで火となっていた畳の蓋が、ドッと、かの女の体へ倒れかかった。一瞬……ボウ……といったきり、あとは、なんの声もしない……。
ただ、真ッ黒な渦と、火の粉の微塵がもうもうとそこを立てこめてしまった。
そこへ、目明し万吉が、こうとは知らずに、鏡を叩き砕いたのである。
「万吉ッつぁん――縄を!」