Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
二度と、帰るまいとまでして、かれは求めて漂泊していたのか、深い理由がなければならない。
それは、なすべからざる恋をしたためにである。お千絵と恋をしたことが、かれを余儀なくそうさせた。
お千絵と恋をしたことが、なぜいけないかといえば、かの女は甲賀組の娘である。幕府の政策として、隠密方の者は、必ず、同役以外の者とは縁を結べぬ掟であった。
笹の間詰、お庭の者、などと称される隠密の役は、駿河台の甲賀組、四谷の伊賀組、牛込の根来組、こう三ヵ所に組屋敷があった。
いずれも柳営の出入り自由で、将軍家と会う時も、笹の間かお駕台とよぶ所で、直問直答のならわしである。いわば当時の御用探偵で将軍自身のささやきをうけて、疑わしき諸国の大名を探りに出るのであるから、一倍その機密のもれるのをおそれたのだ。で、この三組の者にかぎって、同役以外の家すじとの養子縁組が固く禁じられて、みな神文血判の御誓書を上げてある。
だのに――お千絵は恋をした。
弦之丞にとっても、それは、なすべからざる恋であった。
その恋は、旅川周馬に呪われて幕府の耳に入ることになり、かれが江戸に止まる以上は、かれの父法月一学の家も、またかれ自身も、恋人の身も亡びることになるのであった。