Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
「しッ……」と後ろを制しながら、先に立った森啓之助、生洲の小橋を匍い渡って、以前の屋の内をそッと覗くと、お米も由造も早やそこには居合せないで、ただ洩れるかすかな声。
「う、うウむ……」というのは多市の呻きであろう。枕元には銀五郎が、その寝顔を見まもりながら、三味の遠音や色町の夜を外にして深い思案に落ちている。
「あれだな?」
と、無言に目指しあって、パッと家の内へ躍りこんだ九鬼弥助。枕元から立ちかける銀五郎の利腕をムズと捻じ上げて、
「阿波へ入りこもうとする江戸の間諜! すなおに吾々と同行しろッ!」
図星をさして真っ向から対手の胆を挫きにかかった。
ぎょッとしたが銀五郎、さすがに練れている所がある。色を隠してさあらぬ様子、取られた利腕を預けたままで、
「お人違いでございましょう、高野詣りの帰りの者、阿波へ入りこもうの間諜のと申すような身柄ではございませぬ」穏やかにいい澄ました。
「いうな、最前の密談を聞く者あって、汝が甲賀世阿弥の縁故の者ということは明白なのだ。言い訳があるならお下屋敷へ参った上に、何なりと申し述べろ!」
「や、ではあなたは蜂須賀家の」
「知れたこと、お船手組の九鬼弥助だ。