Classiques japonais avec furigana
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ちいさこべ
ちいさこべ
山本 周五郎
Lisez ちいさこべ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 33 480 caractères · 67 écrans
三
板橋で日が暮れ、本郷台を外神田へくだるときは、もう暗くて眺望はきかなかったが、湯島から下はいちめんに黒く、灯もごくまばらで、いかにも荒涼としたけしきだった。和泉橋を渡って岩井町へ着くまで、どちらを見ても焼け跡ばかりだったし、表通りだけぽつぽつ建っている家も、みな仮小屋か、それにちかいざつな建物であった。
大留の店は元の場所だが、本普請をする地面をよけて、二丁目のほうへ寄った端に建ててあった。板を打付けて作ったまったくの仮小屋で、横に長く、佐久間町のほうへ向って戸口があり、「大留」と書いた提灯が、まわりの焼け跡に明るく光りを投げていた。松三の先触れで、戸口の前に立っていた出迎えの者たちが、われ勝ちに挨拶するのを聞きながら、茂次は口の中でそっと呟いた。
「お父っつぁんおっ母さん、いま帰りました」
三
明くる朝、茂次は子供たちの騒ぐ声で眼をさました。
横に長いその小屋は三つに区切られていた。東の端が茂次、西の端がおりつの部屋で、勝手が付いている。そのまん中が職人たちのもので、十二帖ばかりの広さだった。――まえの晩はそこで酒盛りをしたのだが、子供たちの姿は見えなかった。