Classiques japonais avec furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lisez パンドラの匣 (パンドラのはこ) de Dazai Osamu (太宰 治) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 192 644 caractères · 386 écrans
誰もいないらしい。あきらめて、外へ出た。
陽春。額に汗がにじみ出る。つめたいものを飲みたくなって、昭和通りの小さい食堂へはいって、ソーダ水を飲んで、それからついでに、ライスカレーを食べた。別に、おなかが空いていたわけではなかったが、なんだか不安で、食べずには、居られなかったのだ。おなかが一ぱいになったら、頭もぼんやりして来て、いらだたしい気持も、少しおさまった。そこを出て、ぶらぶら歌舞伎座の前まで行って、絵看板を見て、さて、それからまた新富町の研究所へ引返した。
それこそ一時ジャストである。僕は、アパートの階段をのぼった。来ている。来ている。二十人くらい。でもまあ、なんて生気の無い顔をした奴ばかりなんだろう。学生が五人。女が三人。ひでえ女だ。永遠に、従妹ベット一役だ。他は皆、生活に疲れた顔をした背広姿の三十前後の人たちである。全然、芸術に縁のないような表情の、番頭さんみたいな四十男もいる。不思議な気がした。みんな神妙に、伏目になって、廊下の壁に寄りかかり、立ったりしゃがんだりして、時々、ひそひそ話を交わしたりしている。暗い気がした。ここは、敗残者の来るところではないかと思った。