Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Lisez ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) de 永井 隆 (ながいたかし) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 107 351 caractères · 213 écrans
私ははっとそれに気がついた、母の分まで引き受けてつとめようと心には決めていながら、実際やってみると、第一歩からして、このように、こまかい心遣いをしそこねるのだった。私は流しへ立って行って小皿を持ってきて、それに桃を移し、二人の手にそれぞれ渡した。子供はようやく桃を口に入れた。
母はこんなしつけもしておいたのだった。私は今さらながら、これから後の養育は並み大抵のことではないと、しみじみ感じた。
桃を一人に二切れずつ配ったら、かんの底にまだ二切れ残っているのだった。──この二切れは妻の分になるはずだったのだ。たとえ焼け跡に親子四人そろって生き残っていて、露天でこのかんづめを切りひらき、二切れずつ分けて食べるのであったら、二人の子は手を打ち声を上げて喜んだであろうものを……妻もその喜びの声を予期していたろうものを……。私はかんの底に残った二切れの、こはく色のなめらかな桃の肉が、いつしか目のピントからはずれるのも忘れ、とりとめもなく過ぎし日を思い、これからたどらねばならぬ親子三人の、はるかな道を思っていたのであった。
──それからまる三年たった。長い長い三年だった。