Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
Lisez 二つの (ふたつのじょぶん) de 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 115 903 caractères · 236 écrans
電灯は消してあるので、顕微鏡の照明用のラムプの光だけが、わずかに洩れて、雪の壁がほの白く光っている。このうす暗い雪洞の中で梢の風音にじっと耳を傾けていると、ダーウィンの『ビーグル号周遊記』の中の一つの場面がふと心に浮かんで来る。ところは南米の海岸である。原始林が海岸近くまで迫っていて、その中には、無数の鳥獣と昆虫とが、夜をとおしてあらゆる騒音を立てている。暗い海の上に碇泊しているビーグル号の甲板の上で、ダーウィンは、深夜ただ一人この遥かなる騒音に耳を傾ける。人界からは遠く隔絶した世界である。ダーウィンは、この世界を「最も逆説的な騒音と沈黙との調和(The most paradoxical harmony of noise and silence)」という言葉で表現している。
入口の幕がはためいて、一陣の風とともに、粉雪がさっと吹き込んで来る。台の上にも、装置の上にも水晶の粉のような雪が、薄絹を張ったように、一面にほの白く散らされる。こう風が強くなっては、結晶は降って来る間にこわされてしまうので、実験材料にはならない。もう寝た方がよさそうである。身体もすっかり冷え切ったようだから。