Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans

Aozora Bunko

「どうしてあの蟹がまた出たろう。」

「ゆうべの蟹は一体どうしたろう。」と、遠泉君は言った。

「なんでも隣りの連中が庭へ捨ててしまったらしい。」と、本多は深く気に留めないように言った。

「それがそこらにうろ付いて、夜になって又這い込んで来たんだろう。」

「あれ、見たまえ。又となりの方へ這って行く。」と、田宮は団扇でまた指さした。

「はは、蟹もこっちへは来ないで隣へ行く。」と、本多は笑った。「やっぱり女のいるところの方がいいと見えるね。」

遠泉君も一緒になって笑ったが、田宮はあくまでも真面目であった。彼は眼を据えて蟹のゆくえを見つめているうちに、美しい甲の持ち主はもう隣り座敷の方へ行き過ぎてしまった。きっとまた女たちが騒ぎ出すだろうと、こっちでは耳を引き立てて窺っていたが、隣りではなんにも気がつかないらしく、やはり何かべちゃべちゃと話しつづけていた。

「御用心、御用心。」と、本多はとなりへ声をかけた。「蟹がまた這い込みましたよ。」

となりでは急に話し声をやめて、そこらを探し廻っていたらしいが、やがて一度にどっと笑い出した。かれらは蟹を発見し得ないので、本多にかつがれたのだと思っていたらしかった。