Classiques japonais avec furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans
侍従もその眼色で大抵推量したらしい。襟を掻いつくろって起とうとする小坂部の袂に取り付いて又訴えた。
「この事をわたくしが洩らしたなど、必ず仰せ下されますな。今の折り柄、どのようなお祟りを受きょうも知れません。」
「それはわたしも心得ています。」
小坂部はうなずいて出て行った。兄も不同意とあるからは一応の意見も諫言も試みたに相違ない。それを押し退けて横車をひき出そうとする無理非道の父に対して、女の口から更に切諫を試みようとするのであるから、並大抵のことではむずかしい。かれは強い決心を以って父の前に出ると、師直はいつの間にか寝道具を取り払わせて、紫紺地に巴の模様を白く染め出した直垂を着て、敷皮の上に武者あぐらを掻いていた。もう疑うまでもない。父のいでたちが一切の事実を説明しているように思われて、小坂部の胸は今更のように跳った。
「いつの間にかお床を揚げさせられて、御病気御本復でござりまするか。」と、かれは何げなく訊いた。
「癒っても癒らいでも、起きる時には起きねばならぬ。」と、師直は持っている扇を膝の上に突き立てて、娘の顔を睨むように視た。「たとえばここへ敵が寄せかけたという時、病気じゃとて安閑と寝そべっていらりょうか。