Classiques japonais avec furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans
」
権右衛門は吠えるような声で家来どもに命令すると、かれらももうおとなしく見物していられなくなった。持っている松明をからりと投げ捨てて、七、八人が一度に寄り合って来て、まず暴れ狂う小坂部を取り押さえた。同時に采女も押し伏せられた。もがいても狂っても、多勢に無勢である。采女は大地に捻じつけられて、両腕をひしひしと縛られてしまった。
「よい、よい。そやつを牽け。」と、権右衛門はひたいの血をぬぐいながら言った。「姫もお立ちゃれ。」
かれらもさすがに小坂部に縄をかけようとはしなかった。しかもかれは懐剣をしっかりと掴んで放さないので、家来の一人はその利き腕を捉えて引ったてて行った。縄にかかった采女はそのあとから引き摺られて行った。権右衛門は先きに立って、もと来た路を引っ返して、かの辻堂の前まで来ると焚火はまだとろとろと燃え残っていた。
「まず待て。」
権右衛門は辻堂の縁に腰をおろして、焚火の弱い光りをたよりに額の傷の始末をしようとした。新九郎も袒をくつろげて、腕の傷を朋輩に巻いて貰った。
「そこらに水はないか。」
眼に滲む血を洗おうとして、権右衛門はあたりを見まわすと、家来の一人はかの古沼に眼をつけてそこへ水を汲みに行こうとすると、堂の暗い蔭からかの眇目の男が幽霊のようにあらわれた。