Classiques japonais avec furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans
もう半狂乱のかれは、自分の手を取りしばっている憎い家来どもの腕に噛み付いて、無理にその手をふり放そうとあせり狂ったが、家来どもは意地にかかって主人の娘を厳重に押し据えていた。
「采女……采女……。」と、小坂部は息も絶えだえになるほどに叫びつづけた。
この場合、かれは救いの神ほとけはいうもおろか、悪魔の手にでも縋り付いて男の危急を救いたかった。異国の眇目の男――それがかれの胸に突然うかんだので、小坂部はどこを的ともなしに闇の空を仰いで呼んだ。
「異国のお人……。早く来てくだされ。異国のお人……。助けてくだされ。異国のお人……。」
それに応えるように、どこからか闇を剪って一つの礫が飛んで来て、采女を囲んでいる敵の一人の真っ向を強く撲った。つづいて大きい石がばらばらと飛んで来て、先きに立っている二、三人は忽ちに眼鼻を撲たれた。天狗礫とでもいいそうな、この不意撃ちにかれらも慌てた。相手は暗い中に忍んでいるので、どこの誰と見定める便宜もないが、それがかの怪しい異国の男の仕業であるらしいことは誰にも想像された。小坂部にも無論にそう信じられたので、かれは嗄れた声をふり絞って叫びつづけた。