Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

Lisez 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 094 caractères · 411 écrans

Aozora Bunko

彼はいたずらに牙を噛んで木偶のように突っ立っていると、女はほほと軽く笑った。

「最前から入り代り立ち代って幾人来ることやら、誰も彼も二階三階まで来る間に、ことごとく鳥獣の餌食になってしまうに、おのればかりは無事にここまで登り着いたは、運が強いか、力が強いか、いずれにしても果報者じゃ。その果報にめでて今日ばかりは助けてやる。再びまいるな。」

言い捨ててかれは再び燈火の前に向かった。そのうしろ姿を睨みつけながら、市松は一と足も前に踏み出すことが出来なかった。それでも彼は罵るように又訊いた。

「して、おのれは何者じゃ。」

「はて、くどい。わたしは小坂部というものじゃ。」

かれの頭の上に燃えていた微かな火は吹き消すように消えた。それと同時に、なんとも知れない恐怖が氷のように市松の惣身を冷たくした。人を人とも思わない大胆不敵の彼も、もうここにはどうしても居たたまれないような臆病な人間に生まれ変わって、五体の自由になったのを幸いに、ころげるように階段を逃げて降りた。明かるい土の上に立って、はじめてほっと息をついた彼は、その顔色を藍のようにしていた。

「ええ、おのれまで弱い奴じゃ。