Classiques japonais avec furigana
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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
Lisez 似而非物語 (えせものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 31 817 caractères · 64 écrans
もちろん美男というほどではないが、うっとりとねむそうにしている眼や、高い鼻や、いつも誰かをさげすんでいるような唇つきなどに、娘たちの心を唆る特殊な魅力があったらしい。彼女たちは絶えず彼にながしめをくれ、つきまとい、思わせぶりや厭味などで彼をうるさがらせた。それだけならよかったが、やがて黒門のお登女さまの問題が起こった。
黒門というのは村一番の旧家で、村の土地はもちろん、付近に多くの山林を持っていた、また相当な金持でもあった。屋敷は村の西側のもっとも高い処にあり、五棟の土蔵はべつとして、ぜんたいの建物は鎌倉時代の建築といわれる壮大なものであった。黒木の門には小庇の付いた窓があり、昔はここで訴願などを受付けたという。また門の脇には高札場があって、現在でも領主加賀様の制札が掲げられる。土地の者は、(その門のため)単に黒門と呼んでいるが、正式には「庄屋」の役を勤めているのである。お登女さまというのはその当主であった。ふしぎなことには、黒門ではもう七代も女主人が続いていた。代々お登女さまという名であって、彼女たちは代々ひとつの夢を受け伝えて来た。
――緋縅の大鎧を衣て、竜頭と金鍬形の付いた兜をかぶって、連銭葦毛の馬に乗った美しい若武者が迎えに来る、光り耀やくような若い大将が、それがお登女の花婿である。