Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

Lisez 似而非物語 (えせものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 31 817 caractères · 64 écrans

Aozora Bunko

彼は無為にして生きてきた。時代は騒がしく生きるに困難な条件が多かった。しかも彼は怠けたいように怠けて、なにごとも為さずして生きてきた。彼には、この世の中はどうにかなってゆくものであった、従来の経験が彼にそれを証明していた。

「おらがそんな大豪傑と試合するなんて、そんなばかげたことがある筈はねえさ」

杢助はそう呟いた。

「そのまえになにか起こるだ、おらが試合なんぞしねえで済むように、きっとなにかが起こるだ、これまでいつもそんなふうだったし、こんどだけそうでねえわけがなかんべえさ」

彼はおちつきをとり戻したのであった。

杢助は自分の運を信じた。この災難が必ず解消するだろうと信じた。城へ着いてからも、試合の場所(それは城中の馬場であったが)へ出てからも、その信念にゆるぎはなかった。ただその場のものものしい設備と、居並んだ前田家臣らのきらびやかさと、その数の莫大さにはびっくりした。少なからず気おくれがし、頭がのぼせた。ぼうっとのぼせて、尾井幾兵衛がなにか云ってもよくわからず、ただ幾兵衛の云うままになり、されるままになっていた。

――もうなにかが起こってもいいだにな、と杢助は思った。