Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

Lisez 何が私をこうさせたか (なにがわたしをこうさせたか) de 金子 ふみ子 (かねこふみこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 191 571 caractères · 383 écrans

Aozora Bunko

私は何も話したくなかった。嬉しいような、面目ないような、何とも言いようのない心が私に沈黙を守らせた。

「荷物はどうしたの?」

「別に何もないの。行李があるんだけど、今日はもちろん着いていないでしょう」

「そうねえ、じゃ、すぐ帰ることにしましょう」

「ええ」

二人は改札口から外に出た。そしてすぐ村に向って歩き出した。けれど、もう夕暮である。日のあるうちに帰ることはできない。そこで私達は、駅から家までのちょうど中程にある叔父の寺に――これは後で書く――泊った。そして、翌日、家に帰りついたのはもうお昼頃であった。

春であった。村は麗らかな日に霞んでいた。麦は色づき始め、菜の花が黄色く彩どっていた。鶯が山に鳴き家々の庭には沈丁香の花が匂っていた。

眼の前に母の実家が見えた。東の小川の丸木橋を渡って、家の前に出ると、叔父がそこの野菜畑で働いていた。

朝鮮を経つとき、私は昂奮していた。一刻も速くこの地獄から逃れ出たいと希願した。汽車に私は、早く朝鮮から連れて行ってくれと願った。どこへでも一刻も速く、と願った。実はしかしどこにつれて行ってくれというあてはなかったのだ。