Classiques japonais avec furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lisez 光は影を (ひかりはかげを) de 岸田 国士 (きしだくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 262 caractères · 276 écrans
しばらく、沈黙がつゞいた。彼女の、軽い溜息が一度、二度、彼の耳に伝わつて来た。すると、いきなり、思いがけなく、はにかみを含んだ声で、
「ねえ、ちよつとだけ、こゝへいらしつていゝわ。おとなしくなさる約束でよ……」
おとなしくしていないのは、結局、彼女の方であつた。
京野等志は、いつか、深い眠りにおちこんでいたが、小萩は、瞼がさえかえつて、夜の明け方まで、まんじりともしなかつた。
それでも、二人は、八時に床をはなれて、なにか、しんと静まり返つた気分で、朝食をとり、小一時間、公園のあちこちをうろついた。檻の小熊や、猿のむれに笑い興じ、藤村の詩碑の前にたゝずみ、千曲川の急流にのぞんだ崖の上で、小萩は、思い出したように、浅間の爆発について、その時の詳しい話をしてきかせた。
「からだがぐつと宙に押しあげられたと思つたら、部屋じゆうの窓はおゝかた外れて、窓ガラスがメチャメチャにわれたのよ。それと、ほとんどいつしよに、爆弾の落ちたような音がして、部屋じゆうが、いつまでもゆれてるの。電燈のカサは落ちる。テーブルの上に立て、あつた薬瓶は倒れる。そのうちに、屋根へバラバラ石のあたる音がするでしよう。