Classiques japonais avec furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lisez 光は影を (ひかりはかげを) de 岸田 国士 (きしだくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 262 caractères · 276 écrans
二
三度目は気をつけなくつちや……」
「そうだよ」
と、母は、大きくうなずいた。
「お父さんもだんだん折れて来なすつた。時代がすつかり変つたんだから……」
すると、多津が、しんみりと、
「いゝわねえ、お母さんは……。時代が変つても、それほどお驚きにならない修業ができていらつしやるから……」
「そうともさ。あたしにや、自分の時代なんてものはなかつたんだもの」
これは皮肉な名言であつた。彼も、多津も、顔を見合わせて、苦笑した。
二
一週間たち、二週間目がもう終ろうとするのに、小諸の療養所からはなんの音沙汰もなかつた。急変がない限りという医者の言葉が思いだされ、この病気も、時間が有利に解決するという場合があるらしく思われた。それゆえ、二週間を経てなんの音沙汰もないということは、すくなくとも、意を強くするに足る事実ではないか、と、自分に言いきかせた。
こういう矢先、会社の経営が急に困難になりつゝあるという寝耳に水の情報が、父を通じて彼にはいつた。
「それや、いつたい、どういうわけなんです。僕の工場だけは、立派に採算がとれているはずですよ」
「だからさ、結局、工場によつて成績が違うということ、それに、税金の過重負担などもあつて、全体の収支のバランスがとれなくなつたということ、だ」