Classiques japonais avec furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lisez 光は影を (ひかりはかげを) de 岸田 国士 (きしだくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 262 caractères · 276 écrans
考えれば、それは不思議でもなんでもない。古い「家」の重圧から解放され、不必要にまつわりつく肉親の眼から逃れ出た、一つの若い生命の跳躍が、そこにみられるからであつた。
京野等志は、腕組みをして、じつと眼をつぶつた。両親をはじめ、家族の一人一人の面影が瞼に浮ぶ。それらの一人一人が、多かれ少なかれ「家」を愛し、そして、「家」を憎んでいた。春の風が、ある時は、あの「家」にも吹いたに違いない。しかし、あの家に吹き荒んだ冬の風を、誰が一番多く身に受けたろう? 美佐か? 深志か? それとも、母か?
彼は、ふと、あれから久しく顔をみない弟深志の安否が気になりだした。そして、いつか、今日の真喜のように、眼を輝やかしてこゝへ訪ねて来ないものかと思つた。
窓のしずかに開く音がした。
朝の化粧をすました小萩の顔が、そこからのぞいていた。
「トシ、そこでなにしてらつしやるの? お湯がもう沸いたわ」
「あ、そうだ、忘れてた。失敬、失敬……。もう起きるの? 今日はメチャクチャにいゝ天気だぜ」
「気のせいかしら? 花の匂いがするわ。なんでしよう?」
眼を細めて、小萩は、その匂いのする方角を見定めようとしている。