Classiques japonais avec furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lisez 吸血鬼 (きゅうけつき) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 190 554 caractères · 381 écrans
二人はボソボソと囁きながら、蝸牛の殻の様に、グルグル曲った、板張りの細道を、奥へ奥へと歩いて行った。
両側には、菊人形の様々の場面が、美しいというよりは、寧ろ不気味な、グロテスクな感じで、並んでいた。そして、むせ返る菊の薫りだ。
文代は、段々男の言葉を信じなくなっていた。恐ろしい疑いが、黒雲の様に、心の中に群がり湧いていた。
併し、彼女は、それだからといって、逃げ出そうとする様な、意気地なしではない。彼女こそ名にし負う怪賊「魔術師」の娘だ。謂わば和製女ヴィドックなのだ。若しこの男が、例の唇のない怪物であったら、予期せぬ手柄が立てられぬものでもない。彼女は寧ろ、この好機会を喜んだ。
謀られたと見せて、却て敵を謀るべき策略が、この時既に彼女の胸中に湧き上っていた。
行く程に、菊人形の舞台は、一つ毎に大がかりになって行った。
丹塗の高欄美々しく、見上げるばかりの五重の塔が聳えている。数十丈の懸崖を落る、人工の滝つ瀬、張りボテの大山脈、薄暗い杉並木、竹藪、大きな池、深い谷底、そこに天然の如く生茂る青葉、薫る菊花、そして、無数の生人形だ。
あの大鉄傘の中を、或は昇り、或は下り、迂余曲折する迷路、ある箇所は、八幡の藪不知みたいな、真暗な木立になって、鏡仕掛けで隠顕する、幽霊まで拵えてある。