Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 739 caractères · 23 écrans
一
例の柔かい間接光線に照らされた会場、言い知れぬ香料の匂う裡に、その夜の会員はそこそこ、吉井明子夫人や幹事の今八郎を中心に、老ディレッタントの話に耳を傾けます。
「――人の心の不思議は、この地球の上に人類の住んでいる限り、解き尽すことの出来ない素晴しい謎でしょう。どうかしたら、地球は老いさらばい、その上に住む幾十億の人間は、殆んど死に尽してしまって、最後に男と女とたった二人だけ、生き残ったとしても、お互に解くことの出来ない心の謎に、苦しみ合わなければなるまいと思います」
一
――さて、私の申し上げるのは、絶対に真当の話で、嘘も偽りも、話術的な技巧も加えては居りませんが、そんな馬鹿なことが――と仰しゃる方があるかも知れませんので、本題に入る前に、これによく似た例で、歴史的に有名な話を一つ紹介して置き度いと存じます。
エクトル・ベルリオーズ、この名は皆様よく御存じですね。一八〇三年フランスの生んだ革命的な音楽家で、その作曲者としての、歴史的地位は、ベートーヴェンを承けてワーグナーに先駆し、「幻想交響曲」や「ファウストの劫罰」を作って近代音楽の基礎を築き上げた、最も偉大な天才ですが、この人は恐ろしく弱気で無鉄砲で情熱家で、十二歳の時早くも自分より六つも年上のエステルという「大きな眼を持った、薔薇色の靴をはいた」