Classiques japonais avec furigana
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おばけのこえ
妖怪談義
柳田 国男
Lisez 妖怪談義 (おばけのこえ) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 618 caractères · 16 écrans
幻覚の実験
これは今から四十八年前の実験で、うそは言わぬつもりだが、余り古い話だから自分でも少し心もとない。今は単にこの種類のできごとでも、なるべく話されたままに記録しておけば、役に立つという一例として書いてみるのである。人が物を信じ得る範囲は、今よりもかつてはずっと広かったということは、こういう事実を積み重ねて、始めて客観的に明らかになって来るかと思う。
日は忘れたが、ある春の日の午前十一時前後、下総北相馬郡布川という町の、高台の東南麓にあった兄の家の庭で、当時十四歳であった自分は、一人で土いじりをしていた。岡に登って行こうとする急な細路のすぐ下が、この家の庭園の一部になっていて、土蔵の前の二十坪ばかりの平地のまん中に、何か二三本の木があって、その下に小さな石の祠が南を向いて立っていた。この家の持主の先々代の、非常に長命をした老母の霊を祀っているように聞いていた。当時なかなかいたずらであった自分は、その前に叱る人のおらぬ時を測って、そっとその祠の石の戸を開いて見たことがある。中には幣も鏡もなくて、単に中央を彫り窪めて、径五寸ばかりの石の球が篏め込んであった。