Classiques japonais avec furigana
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おばけのこえ
妖怪談義
柳田 国男
Lisez 妖怪談義 (おばけのこえ) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 618 caractères · 16 écrans
越中の山近くの町で、夕方のことをシケシケというのは、しげしげと人を見るというなどが元のようでもあるが、富山の附近の者は気ちがいのことをシカシカといっているから、最初はかえってシカとせぬことをシカシカといったのであろう。曠野集の付句に、
何事を泣きけん髪を振おほひ
しかしか物も言はぬつれなさ
恥かしといやがる馬にかき乗せて
これなどにはまだ少し古い感じが遺っている。
尾張の名古屋などは、以前の方言は黄昏がウソウソであった。ウソはいつかも奥さまの会で話したごとく、近世一つの悪徳と解せられるようになる以前、ほとんど今日の文芸という語と同じに、あらゆる空想の興味を包括していたことがあった。むつかしく言えば現実の粗材、すなわちもう一歩を踏み込んでみないと、それを経験とも知識ともすることのできぬものの名であった。迂散などという漢字を宛てようとした動機が、この言葉の中にはこもっている。タチアイという言葉が夕方を意味したのも、こちらからおいおいにわかって来るかも知れない。今でも取引所の中ではよく使っているが、タチアイは本来市立のことであった。仲間でない人々が顔を合わす機会は、もとは交易の時ばかりであったゆえに、同じ用語を以ていわゆる雀色時の、人に気を許されぬ時刻を形容したのではなかったか。