Classiques japonais avec furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lisez 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 83 234 caractères · 160 écrans
滋幹がそう云う齢になってもなお、母のことが忘れられず、折にふれては面影を想い浮かべてなつかしがっていたと云うのには、尤もな理由が存するのであって、昔、あの事件のあった当座、五つ六つの幼童の頃にこそ彼も本院の館へ出入りすることを許されていたものゝ、七八歳になった頃からは早くもさま/″\な浮世の掟に制せられてそうも行かなくなったらしく、その後ずっと、母が健在であることは聞き及びながら、親しく会う機会に恵まれずにいたのであった。いったい誰の場合でも、母の顔を全く知らないのなら格別、頑是ない時分におぼろげながら母を見た記憶があり、而も間もなくその母が餘所の男の所へ走ってしまったと云うようなことに出遭うと、その子の母を思慕する情は尋常一様でないのであるが、況んやその母が世にも稀なる美女であった場合、又況んや、よう/\物心のついた年頃に、今は他人の妻になっている母の許を訪れたり、その母の手で腕へ歌を書かれたりした、異常な思い出を持つ場合に於いてをや、そして又況んや、その母が現に存命中であることが分っている場合に於いてをや、である。かく考えて来れば、滋幹の日記が母恋しさの餘りに綴られた文章のような観があるのも道理であって、現存しているのは断片的な部分々々に過ぎないけれども、その他の部分も必ずや母への憧憬で埋まっていた