Classiques japonais avec furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lisez 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 83 234 caractères · 160 écrans
た彼は、ついぞ此の伯父の存在などを眼中に置いたことはなかったのに、どう云う風の吹き廻しか、伯父に出遇うと変なニコ/\顔をする。そして、御壮健で結構であるが、此の頃の寒さはおこたえになりはしないか、とか、お風邪を召されぬように、とか、取って附けたような愛想を云う。或る日、分けても寒さの厳しい朝のことであったが、伯父の大納言の鼻先から水洟が滴れているのを見ると、彼はそっと寄って行って、
「お洟が出ておりますぞ」
と、注意をして、
「お寒かったら綿の物をたくさんお着込みになることですね」
と、小声で云った。
長寿の人によくあるように、大納言は少し耳が遠いので、
「綿?………」
と聞き返すと、
「ふん、ふん」
と、時平はひとりうなずいて、何やら老人には聞き取れないことを云ったが、やがて老人が館に帰ると、左大臣からの使者だと云って、雪のような綿を幾屯と云うほど届けて来た。「あなたのように齢八十になん/\としてなお矍鑠たる元気を保ち、壮者を凌ぐ趣がおありになるのは羨しい次第である。国に斯様な朝臣があるのは寔にめでたい限りであるから、何卒此の上とも体を大切にされて、一日でも多く長生きをして下さるように」